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座談会・レポート

早川ユミ展レポート
2017.01.13

早川ユミ展レポート

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。

突然ですが、ちょっと深呼吸してみませんか?
「気づいたときに、意識してみましょう。胸に息を集めるのではなく、大気中の気をお腹に入れ込むんです。その入れ込んだ気をからだ中で回すの。私たちはふだん浅い呼吸で止まっています。それを深くするように意識して」(早川ユミさん:ちくちくワークショップにて)

2016年締めくくりの展示は、かぐれでは初めてご紹介する早川ユミさんの個展でした。

色とりどりのはたらき着

「早川ユミの冷えをとる、あたたかな衣服たち展―丹田呼吸と地球のために、かさね着のおすすめ―」と題して、色とりどりの“はたらき着”がかぐれにやってきました。
12月上旬とはいえ、さほど気温も下がらず、店内に差し込む日差しが寒さを和らげる毎日。絵本から飛び出してきたような可愛らしいお洋服と、早川さんの柔らかな笑顔に、心まで温まるような展示期間となりました。

早川ユミさんは、高知の山のてっぺんで野菜や果物を育てながら暮らしている布作家です。
冷えとりや丹田呼吸法を通してご自分の心身とじっくり向き合い、からだを温め、大地と共に生きるための衣服=はたらき着を作り続けています。

アジアの手紡ぎや手織布、藍・黒檀の実・ラックなどの草木染めや泥染め・柿渋染めの布、山岳少数民族の布、リトアニア麻布など、国内外問わず旅先で出合った様々な布を組み合わせた衣服。民族衣装や農民服、もんぺなど、労働のための動きやすい野良着を原型とした表情豊かなはたらき着がかぐれの店頭に並びました。
カラフルな布も、色とりどりな糸のステッチも、早川さんのイラストも、手に取る人を思わず笑顔にさせる魅力を持っていて、本当に絵本の世界から現れたようでした。

早川さんは執筆もされ、ご自身の旅や日々の生活の中で出会う人のこと、食べ物のこと、暮らしのことをご紹介されています。同時に日本全国でちくちくワークショップを開かれ、読者と一緒に心とからだに向き合っています。
そのちくちくワークショップはかぐれでも開催され、今回は湯たんぽぶくろを作りました。著書『からだのーと』を中心にお話しされる早川さんの声に耳を傾けながら、参加されたみなさん一緒にちくちく一針ずつ布を縫い合わせていきました。お話の合間に「隣の人が間違っていないか、お互いに見てあげてくださいね」と声をかける早川さんは、お下げ髪に、お手製のワンピース。まるで少女がそのまま大人になったようなふんわりとした柔らかな空気をまとった人です。
しかし、田畑を耕し、ミツバチと暮らし、料理をし、世界中を旅して、服を作る。お話を聞いているとわかってくるのは、そのパワフルさです。

お話しされる早川さんの声に耳を傾けながらちくちく一針ずつ布を縫い合わせていきました

それでも、なんでもないことのようにお話しされます。「かつて家庭は消費するだけの場ではなく、生み出す場でした。服だけじゃなくて、野菜やお漬物、なんだって。私が今やってることは、昔はみんながやってたことです」

みんなが自分で自分の着るものを作れるようになったらいいなと思って始まったというワークショップも、昔は家庭で普通に行われていたことだとお話しされます。

ワークショップ風景

服を全て作るのは大変なことだけれど、身につけるものに愛着を持つことはとても素敵なことですよね。作るだけでなく、丁寧に洗濯したり、ほつれたら直したり、着られなくなっても誰か使ってくれる人に譲ったり。
自分がいいと思えるものを、大切に長く使う。消費するだけではない、物との丁寧な付き合い方がここにもありました。

早川ユミさんからは、ご自身の二本の足でしっかり立っているという印象を受けました。
ご自分のからだにご自分が責任を持ち、正面から向き合って大切にしています。
私はどうだろう。みなさんはどうですか?今、口にしている食べ物、身につけている服、どこから来て何でできているのか。全部自分で生み出すことはできないし、疑い始めたらきりがないけれど、見つめ直す時間を持つことは決して無駄なことではありませんね。自分のからだに入れるもの、触れるもの。あるいは自分だけでなく、大切な人の。
ワークショップに参加されたお客様や展示にいらしたお客様の中には、アレルギーをお持ちだったり、からだを壊された経験があったりする方も少なくありませんでした。
大小にかかわらず、私たちはそれぞれに敏感な部分や不安なこと、良いときも悪いときも含んだサイクルを持って生活していますね。そんな揺らぎやすいからだとどう向き合っていけば良いのでしょうか。

早川さんは「自分の感覚を大切にするべき」と言います。私も店頭でお客様と一緒に悩むことがあります。

店頭風景

特に冷えとり靴下について。冷えとりも、人によって解釈が異なります。
本によって書いてあることが正反対のことも多々あります。寝るときは素足がいいという人もいれば、入浴中以外はずっと履くべきという人も。何が正しいのか、何を信じればいいのか、不安ですよね。
早川さんは言います。「自分が気持ちいいか、気持ち悪いかを指標にすればいいんです。

あまりにこだわり過ぎるのは良くありません。自分のからだで実証していけばいい。
私も自分でやってみて、良かったと本当に思えることを紹介しています。みんな自然の贈り物のからだを持っているのだから、それを信じて」。
自分のからだに向き合うことで、からだが何を必要としているのか聞き取る。シンプルだけれど難しい。けれど、少しずつ実証していくことでそれに応えられる力をつけていきたいと思いました。

「最近は20代30代の人もどんどん冷えとりをしていてうれしいな」とにこやかに話す早川さんのお顔が忘れられません。
前向きに、そして具体的に行動する勇気を与えられました。冷えとりは選択肢の一つだと思います。どんな形であれ、自分のからだと向き合い、大切にできる、本当の意味で強い人が増えていけばいいなと思う展示となりました。
自分のからだはどうしたら気持ちよく過ごせるのか、一緒に実証していきませんか。
早川さん、ご来場いただきましたみなさま、ありがとうございました。


かぐれ