読みもの

表紙に戻る

インタビュー

過去と未来を行き来して
「GO KASAMASHIKO via TOKYO」企画コンテンツ
2017.02.01

過去と未来を行き来して

2月中旬より渋谷・原宿周辺の6つのショップで、笠間と益子の作陶家を紹介する合同展が開催されます。
かぐれ 表参道店では、18日(土)より益子にある仁平古家具店さんをお招きして、オーナー・仁平透さんの視点で選ばれた古道具や器をご紹介します。

1月某日。東京から車で約2時間。真岡ICを降りると、乾いた田んぼと青空が広がるのどかな冬景色が待っていました。栃木県は益子町に、仁平さんを訪ねました。

仁平さんは、県内で喫茶店を含む4店舗を運営されています。真岡市と益子町にお店を構える「仁平古家具店」。仁平古家具店よりもやや大型の家具や、益子を中心とした作家の器などを扱う「pejite」。そして「喫茶Salvador」。

pejite 店内

まず訪ねたのはpejite。周りの家々よりも一際大きな建物。一歩中に足を踏み入れると、天井が高く柱のないまるで大きな箱。聞けば、もともとは栃木県産の大谷石を使った米蔵だったそうです。
現在も石がそのまま店内の一部として使われており、古い家具や器と調和したその世界観に心を奪われるばかり。ここには明治・大正・昭和初期に作られた日本の美しい家具、地元益子を中心とした作家の器、シンプルながらもこだわりの詰まったお洋服など、いずれも大量生産ではない方法で作られた日本人の手仕事が感じられるアイテムが並んでいます。

pejite 店内

西側の大きなガラス戸の入り口から静かに光が差し込む店内は、時間を経たものだけが持つ特有の緊張感と包容力をたたえていました。
それぞれが持つ物語を胸に、これから出会う誰かをただ凛と待っている。そんな素敵なアイテムが整然と並ぶ空間で、仁平さんにお話を伺いました。

選ぶことと直すこと

「日本各地から希少な古い家具や雑貨を集めてきます。それを一点一点心を込めて水洗いすることから始まり、修理・再生して、末永く使っていただけるように仕上げています」
昔から日本の古いものが好きだったという仁平さん。古いものを見つけて拾ってきては、独学で直していたそうです。次第に自分で楽しむだけでなく、人の手でこだわって作られたものの良さを伝えたいとお店を始められました。
お店が増えて4店舗となった現在も、セレクトはすべて仁平さんがされています。ものを選ぶ基準はありますか、という問いには、少し考えてから「特に明確な基準はないですね。強いて言うなら僕の視点でしょうか。古いものであればなんでも良いというわけでなないので。服と同じように、どんな素材で、どんな組み合わせで作っているのか。どんな太さの材をメインにして、どんなデザインで、どんな色に仕上げているか。そんな風にたくさんあるものの中からpejiteや古家具店に合ったものをセレクトします」。

「その時代の日本にしかないものにとても魅力を感じるんです。作った人の意識が宿っている気がして。野暮ったさでさえも魅力になります。今、同じように作れる人や材料はないと思うくらい精密に作られていて。たとえば診療所に置くために作られたちょっと高級な机も、とりあえず納屋で台が必要になって無作為に作られた机も、それぞれに魅力的なんです」

仁平さんの「目」によって選ばれた古いものたち。材料であったり、職人技あるいは素人ならではの組み合わせであったり、今になっては作れないものばかりです。考えられないほどたくさんの古いものを見てきた仁平さん。「なんとなく素敵だな」で終わってしまわない、その確かな眼力がものを言います。

仁平さん インタビュー

「もちろん、かつてはどんなに素晴らしいものだったとしても、状態の確認も大切です。直す手間と、販売することをきちんと考えないといけない。修理のための工房には今3名専属のスタッフがいますけど、常にフル稼働でも追いつけないくらいです」

販売されている家具や雑貨が洗練されているのは、人の手による修理があってこそなのですね。手作業で作られたこだわりを汲み取り、また手作業で修理して受け継いでいく。過去から未来へ、良いものを残していきたいという実直な思いが伝わってきました。

ここを益子の目的地に

「益子は入れ替わりがとてもある場所なんです。いろんな人が来ては、出て行く。だから本当にいろんな人がいて。焼き物をされている方でざっと400人はいます。こんなことやっている人がいたんだって発見できる場になるといいですね。益子はとても奥が深い場所なんです。最近は陶器市などで話題になり、遊びに来てくれる人が増えてうれしいです。どんどん遊びに来てほしいです。住んでくれたら、もちろんもっとうれしい。住むって大変なことだから。好きじゃないとわざわざ移り住めませんよね」

仁平さん インタビュー

では逆に都会に出る若者についてはどう思いますか?とお聞きすると「一度はぜひ都会に出ていってほしいと思います。一度田舎を出ないと見えてこない田舎の良さがあると思うので。僕も東京に出てから、田舎って豊かだなって気づいたんです。一度出たことで、外の人を相手にするためには何が必要か考えられるようになりました」。

地方出身の私にとっても目から鱗な言葉でした。仁平さんがつくるお店は、ただ田舎に帰るだけでなく「外の人を相手に」して、益子に来てもらうという目的意識が体現された場所なのです。
「益子は僕にとって自分のスタイルを無理なく貫ける場所です。東京で同じことを同じ広さの場所でやろうとしても、予算的にも難しい。稼ぐことがメインになって、本当にやりたいことができなくなってしまうかもしれない。僕のやっていることが、もちろん商売も大切だけれど、益子に来てもらうきっかけになれればと思うんです。喫茶店もその一つです。遠くから来て、益子の良さを知ってもらって、少し休憩したいなってときに喫茶店があったらいいんじゃないかと思って作ったお店なので。2時間で東京に出られる場所で、家賃も安くて、環境もいい。自分のペースで、やりたいようにやれる環境です。それをいろんな人に知ってもらいたいと思っています。」

お話を伺って次に訪れたのは、仁平古家具店益子店。
pejiteとは一味違った、こぢんまりとした店構え。店先に並ぶ木の小さな椅子や木箱たちが夕日を受けながら出迎えてくれました。

仁平古家具店益子店

「こっちはpejiteに比べて、なるべくリーズナブルに楽しんでもらえるものを中心にセレクトしています。今の生活に加えても馴染むもの、家に取り入れたら楽しいねと思ってもらえる手ごろ感のあるものを選び、メンテナンスして販売しています」

駄菓子屋で使われていたショーケースや昔の学校で使われていたような小さな引き出し、書類棚。回転する丸椅子、アルミのデスクライト。なんでもないような、大小さまざまな木箱。どれもほっこりと温かみのある、どこか懐かしい家具や雑貨たち。引き出しが少しつっかえたり、ガラス戸を開けるとキイと鳴ったりもするけれど、それもご愛嬌。手から手へつながり、一つとして同じものがない魅力にいっそう愛着が湧いてしまいます。
途中、取材を忘れて真剣にアイテム選びに没頭してしまいました。気になって思わず手に取らずにはいられないものばかりです。

  • 仁平古家具店益子店 店内
  • 仁平古家具店益子店 店内

今回の展示では、仁平古家具店で扱うものをメインに、数名の作家さんの器を仁平さんにセレクトしていただきます。
「器と古道具と、あと少し変わったものも面白いかな。なるべく“際どいもの”を選びますね」と楽しそうにおっしゃってくださり、どんなアイテムが届くのか今から楽しみでなりません。今までとは少し違ったかぐれでの展示。もう二度と出合えない唯一無二のものたちが待っています。
手から手へ、次はあなたの手へ。いろんな人が訪れては、出会い、帰っていく、そんな益子の空気がかぐれに流れ込むことを期待して、皆さまのお越しをお待ちしております。

仁平 透(にへい・とおる)

仁平 透(にへい・とおる)

1978年生まれ。栃木県真岡市と益子町に4店舗を運営する株式会社TOMBO代表。
2009年、「仁平古家具店」真岡店を、2010年、同・益子店をオープン。
2012年、「喫茶Salvador」オープン。
2014年、「pejite」オープン。

仁平古家具店
pejite

インタビュー&文:島田絢子


関連イベント


かぐれ