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座談会・レポート

発酵男子のCOZY TALK vol.6 レポート
2017.03.17

発酵男子のCOZY TALK vol.6 レポート

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。

発酵に関わる男子が日本の発酵醸造文化についてCOZY(麹)に語る、発酵男子のCOZY TALK。6回目となった今回も、毎年恒例、発酵男子たちを呼ぶ参加者の黄色い声援がなくては始まりません。
呼び声「発酵男子ー!」
今年は例年と比べて男性の参加者も多く、黄色いかどうかは怪しいところではありましたが(笑)、スタートです!

レギュラーメンバーは、もちろんこの3人。MCの小倉ヒラクさん、五味醤油の五味仁さん、寺田本家の寺田優さん。発酵男子ファンにはもう説明不要ですね。
詳しいご紹介はこちらからどうぞ。

発酵男子のCOZY TALK

今回のゲストはParadise beer factoryの唐澤秀さんです。
農家でもあり、醸造家でもある唐澤さんは、茨城県鹿嶋市にて自然栽培の野菜やお米を育て、ビール醸造所併設のレストラン「Paradise beer factory」にて、自らが育てた野菜とこだわりの素材を活かした料理、そして自家製ビールを提供されています。

今回はその自家製ビールから2種と、おなじみ寺田本家の日本酒4種が会場で提供されました。そして、おつまみはフードデザイナーの蓮池陽子さんに作っていただきました。
唐澤さんの畑でとれた自然栽培のお米や野菜が使われた、目にもおいしいワンプレート。自然のうまみを活かし、発酵食品もふんだんに用いられたラインナップです。そんなおいしいお酒とおつまみをいただきながらコージートークは進みます。

お酒とおつまみ

「僕はこの世にパラダイスを作りたいんですよ」。そう語る唐澤さんから紹介されたのは、ピンクのラベルがキュートな“5daughters”というビール。なんと今イベントが初お披露目&販売開始ということで、客席からは歓声が上がりました。豊富なラインナップから、なぜ5daughtersが今回特別に紹介されたかというと、なんと寺田本家の酵母=酒粕から作られたビールだったのです。

5daughters

ヒラク「菌にはそれぞれ適材適所があって、境界があります。日本酒なら日本酒の菌、ビールならビールの菌。それをまたぐなんて普通はありえません。普通はそんなことしない……。(唐澤さんを見つめて)やっちゃった?」
唐澤「うん。全然普通に(笑)」。ケロッと答えてしまう唐澤さんに客席から笑いも。もうお気づきの方もいらっしゃるでしょう。この5daughtersの名は、まさに寺田本家の日本酒「五人娘」から来ています。ビール独特の苦味が少なく、爽やかな飲み口。思わずゴクゴク行けちゃいそうなおいしさなんです。お話の途中で、ホップの実が登場しました。なかなか本物を手に取る機会はないですよね。
ビールにおけるホップの役割も語られました。煮沸されていないホップには、豊かなアロマが活きています。唐澤さんが提案された、ホップをビールに浮かべる飲み方に、発酵男子も参加者のみなさんも興味津々。

  • ホップ
  • ホップ

いっそう華やかな香りとなったビールを片手に、菌の話もどんどん進みます。
現代では醸造家も、菌のいわゆる卸業から選んで購入することが一般的だという菌。しかし寺田本家では、蔵に自然に存在し、麹を水に浸す過程で寄ってくる菌=蔵付き麹菌を集めて自家培養しています。中世の方法を現代風にアレンジした寺田本家ならではの手法です。そして寺田本家の蔵には一般の人も入ることができます。時には麹に触れる体験もできます。
ヒラク「いろんな人が出入りすると、ちょっとずつ味が変わっちゃうんじゃないですか?」
寺田「それは大丈夫。いつも変わり続けているし、絶対にこの味って決めて作ってないからね。いろんなことをやってみて、こんなのができたなあって。菌が自然に集まってできた方が、人のからだが喜ぶんじゃないかと思ってる」
参加されたお客様の中からも、「菌が生きてる感じがする」「寺田本家のからだに優しい味が好き」との声が。昔から日本人の生活に密着してきた菌。自然造りならではの、自然の恵みをいただくありがたさを感じます。何より私たちのからだが、おいしいもの・からだにうれしいものを覚えているのかもしれませんね。

それでは、ビールの場合は味の着地点を決めて作っているのでしょうか。
唐澤「もちろん、最初にある程度目指して作り始めはしますね。料理でも、農業でも同じことです。でも、働いてくれるのは菌たちだから、『今年はこう来たか』って感じ。出たとこ勝負というか、出たとこ受け入れ(笑)」

印象に残る「菌が働いてくれている」という言葉。当たり前に思ってしまいそうな過程も、貴重な自然の恵みなのですね。自然がつくるものを受け入れる。そのゆとりがおいしさの秘密かもしれません。
唐澤「もしとんでもないものができても、誰かがうまいと言ってくれるかも。その人には、欲するおいしさなのかもしれない。どうなるかわからないのも楽しい。5daughtersだって、僕も昨日完成品を初めて飲みましたからね。」

この告白には客席からも「えーっ!」と驚きの声が。正真正銘のできたてです。
唐澤「おいしくできて良かった(笑)」

発酵男子のCOZY TALK

ヒラク「誰かがおいしいって言えば、それが伝播していくものですしね。今は世の中に出回っているもののほとんどが機械で計算され、管理されて作られている。でも本来アナログな生き物である人間が、本能的に自然がつくるものを選ぶ時代が来るんじゃないかと思っています」

実際に選ぶ人たちは確実に増えていると五味さんはおっしゃいます。麹を作っても作っても間に合わない、と日々忙しそうな五味さん。それでも手前みそづくりを始めとするワークショップを続けられています。そして「手前みそをつくる人に悪い人はいない」と断言。
五味「手前みそづくりワークショップをいろんな所でするようになってから思いました。手前みそって、作ってから半年から1年経たないと食べられないんですよ。そんなのを、よくわざわざ作りに来てくれるよな、と。自分のことは置いておいて(笑)。自店の麹づくりが間に合わないくらいワークショップをやっているんですけれど、それでもまだまだ『教えてください』って声がやまなくて」
自分の手を通して、時間をかけてでも作ってみたいもの、知りたい世界。そんな大切にしたい思いが、たくさんの人々の心にあることを教えてくれました。

  • 発酵男子のCOZY TALK
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ヒラク「ビールを作るようになって良かったですか?」
唐澤「もちろん良かった。最初から言っているように、僕はパラダイスを作りたい。パラダイスにはおいしいお酒とおいしいご飯が必要なんです。あと、タバコにも興味があるんだよね。今は悪者にされているけれど、現代に残ってるものは何か意味があるはずと思っていて。タバコ以外にも、昔の人がどんなに作りにくくても、おいしいから残そうと守ってきたものや今残っていることには何か意味があるんじゃないか、と。たとえば自然栽培の葉巻を吸ったら、からだに良いものもできるかもしれない。そういうことをどんどんやっていきたい。」

発酵男子のCOZY TALK

ビール作りのきっかけから、酵母菌、麹におみそ汁、そしてタバコの話まで。ホップの香りが膨らむように、発酵男子の今後の展望も膨らみます。昔の人々から受け継がれた伝統を守りつつ、視野広く未来を見つめるその姿は力強く、かっこいいですね。
たとえ手間が掛かったとしても、自分が、そして大切な人が、口にするものや選ぶものについて、発酵を通してもう一度立ち止まって考える機会となったのではないでしょうか。
知らなかった世界が開け、笑い声が絶えないあっという間の2時間。締めくくりはこれを聞かねば終われない、寺田さんによる“もと摺り唄”がみなさんの手拍子と共に会場に響き渡りました。
ますます注目度の高まる発酵男子。来年はどんなお話が聞けるのか。さらにパワーアップしたコージートークが楽しみですね。


かぐれ