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インタビュー

灯される出会い、つなぐ日々
笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」企画コンテンツ
2017.04.14

灯される出会い、つなぐ日々 笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」企画コンテンツ

笑達さん展示

「僕が作家として独立して5年目。その中で出会った人たちをつなぎたい」
今回、笑達さんは4組の作り手の作品と共に、彼らの似顔絵も見せてくれます。似顔絵、写真、衣、蝋燭、そして古材。ジャンルを超えて、一体どのようにつながっていくのでしょうか。
展示へのお話を伺うなかで伝わってくるのは、出会い、つながったすべての人たちへの尊敬の思いでした。

― 早速ですが、i a iさんは、どんな方ですか?

「小さな村で暮らすi a i君は、その村に住んでいる人たちと共に暮らし、自分が作った服を着てもらっている。エプロンとかワンピースとか、その服の上に重なっていくその人の形がある。それも含めて美しいと言って、その人だけが持つ形の美しさを見出してる。すごく尊敬できる人です。僕とは歳も違うし、表現方法も違うけど、心から共感できる。i a i君は、自分たちの暮らしや、共に生きる人たちの暮らしに寄り添って作りたいと話していて、僕もそうありたいって思うから」

自分が求める景色に向かって似顔絵作家として歩みを進める笑達さん。この仕事を天職と思うと同時に、同じ仕事に違和感をもってしまった有紗さんをすぐそばで見てきたからこそ抱いた疑問もあったそうです。
「学生の頃は、自分が本当にやりたいことがわからんかったんよね。あれもこれも素敵で、どれもいいと思っていて。その中で似顔絵と出会い、本当にやりたい事になり、自分の芯になった。僕は有紗のように自分がやってることに対して疑問は抱かなかった。けれど、組織で似顔絵を描き続けていくなかで、いろんな疑問が出始めて、最後には自分の描く絵すらも信じられなくなっていた時期があった。そんななか、国内、海外も含めたいろんな場所で描かせてもらって、たくさんの人と出会う中で、やっぱり大事にしたいと思い至ったのは、普通に暮らしている人の美しさ。それが、自分が見てみたい景色だと思った。その景色をとことん描き続けたいと思って独立した」

笑達さん 有紗さん

― 海外にも何度か行かれていますね。きっかけはなんですか?

「最初は単純に“出会ったことのない人に出会いたい”と思ったのがきっかけ。でも、実際に行ってみたら、日本だから、外国だからって、変わることはないんだとわかった。人がいれば、そこに暮らしがある。そして、それをもっと見てみたいと思ってる」

― この3月にも海外に行かれるんですよね。

「4年前に行ったラオスへ、写真家の黒さん(黒岩正和さん)と一緒に行く予定。黒さんは日本中の島の祭りやアジアの少数民族を撮っている人。生きている人の熱とか、そこに当たり前にある美しさを撮ってる。自然体で何も嘘がなくて、それが彼っぽい。これが撮れるのは、黒さんが生きてるってことなんよね。彼の写真を見て、これは彼自身だと思った。そして僕も、自分が描く似顔絵のような人でありたいんだと思った。二人で同じ景色と出会ったときに、僕は似顔絵を描いて、黒さんは写真を撮る。きっと、また違う見え方ができるんじゃないかなと思う」

ラオスへ2度目の訪問理由を尋ねると、出会った人たちとの縁を切らしたくない、だから会いに行くんだと答えが返ってきました。4歳だった女の子は8歳になってどんなに大きくなってるかなあ、と。会いに行くことが当然のことのように話す様子からは、物理的な距離なんてみじんも感じさせず、そこに暮らす人たちへの尊敬の思いがありました。日本語で「尊敬」というと少し堅苦しいですね。出会った人々を語る笑達さんの笑顔には、もっと当たり前に存在する温かく優しい気持ちがあふれているのでした。

  • 笑達さん 似顔絵
  • 笑達さん 似顔絵

前回の展示では光あふれる色彩の似顔絵に加え、初めてモノクロ作品が並びました。そして、今回は新たに“暗闇で描く似顔絵”も加わります。

― この暗闇で描く似顔絵では、電気を消して蝋燭の明かりだけで描くそうですね。明るいところで描くのと、何が違うのでしょう?

「いつもの似顔絵は、お互いに向き合って描く笑顔で、その場を一緒に作り上げる感覚。僕から質問したり、話をしてもらったりして、やり取りのなかで見えてくる、その人から放たれる素のままの魅力を描いている。一方で暗闇の中ではあまり話さない。火を前にしているとその人自身の奥に潜っていくような、僕自身も自分の奥に潜っていくようなそんな感覚がある。それを描きたい」
火を見つめる横顔は、思いもよらない姿を見せることがあるといいます。
「今までは、『笑顔で色彩を使って正面で』描く顔が美しいと思ってた。でも、火を見つめる横顔を見たとき、すごく美しいと思って。火は人の心を映してくれる。普段自分でも気づいていない心の奥まで潜っていけることがあるんよね。だから、僕が似顔絵を描いているときも、自分の心象に思いを巡らせてほしい。その姿を僕が見て、描いて、火を通してつながることができると思ってる」

― その暗闇で灯す蝋燭を作っているのが河合悠さんですね。

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「うん。悠くんは“蝋燭を作る人”ではなく、“火を灯す人”っていう方がすごく自然。火は、人の暮らしに切っても切れない存在。食べること、闇を照らすこと、祈ることもそう。特別なことでなくても暮らしの中に火があった。悠くんが火を灯しているその姿が美しい。悠くんは火で光を灯す人、火を灯すことで闇を作る人。その光と闇が人の暮らしを豊かにする。悠くんの火はそれを教えてくれる。」

表参道店の空間も、灯される光によっていつもと違う一面が現れるかもしれませんね。

― ReBuilding Center JAPAN(以下リビセン)の代表である東野さんと奥さんの華南子さんの似顔絵は昨年も展示されていましたね。

「今年も似顔絵を紹介します。それと、リビセンは似顔絵会に合わせて古材で額縁を作ってくれます。古材には色や木目や傷っていう、やっぱり人の手では作れない時間が作り出すものがある。それも素敵だし、リビセンに集まる人や、やっていることに魅力があるね。“レスキュー”と呼んで彼らも大事にしていることだけど、物だけじゃなくて、暮らしとか、思い出とか、そこに込められた時を救い出している。そうやって、またつながって新たに重ねられていく時間が本当に美しいと思う。どんなものができるか、僕も本当に楽しみ」

古材で額縁

昨年の展示風景

リビセンだけでなく他の3組の作り手の似顔絵も展示されます。ぜひ、笑達さんの目に映る作り手たちに会いに来てください。また、各地での似顔絵会には、笑達さん自身に毎年会いに来る人たちも少なくありません。歩いた場所や出会った人は、自分自身がその手を離さなければつながっていくのだと教えてくれます。
かぐれでまた新しい出会いがつながることを願って。

インタビュー&文:島田絢子

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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