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インタビュー

笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」 / 川井有紗展「芽ぶき」
関連企画 「もう一度、見てもらえるきっかけを」
2017.04.24

笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」 / 川井有紗展「芽ぶき」 関連企画 「もう一度、見てもらえるきっかけを」

2月上旬。東京から約2時間、まだ雪が残る長野県上諏訪。冷たい風が吹き抜ける諏訪湖は鏡のように澄み切っていました。

上諏訪駅から徒歩約10分、住宅街に大きな倉庫が突如現れました。
今回、笑達さんと有紗さん、お二人の展示にまたがって関わる、古材ショップ兼カフェReBuilding Center JAPAN(以後リビセン)を訪ねました。出迎えてくれたのは、昨年の展示期間中、一緒に店頭に立ってくれた華南子さんと、今回笑達さんの額縁作製を担当される涼子さん。お二人にお話を伺いました。

― 先日京都のギャラリーe.n.sで有紗さんに木っ端(こっぱ)を見せてもらったのですが、そもそも木っ端とはどのようなものですか?

破片や木くず

涼子さん「古材を切り出したときに出る破片や木くずですね。自分が作業している過程で出たものなんです。作業中に切り落とされたり、はがれ落ちたりしたもの。意図的に作ったものではなくて、自然に現れたものなんです。」

― だからいろんな形があるんですね。木っ端は普段から集めて残しているのですか?

涼子さん「お店のディスプレイで使いたいと思うものは取って置くこともあります。でも大半はさすがに捨てていました。木の模様や形が可愛いなあと思うだけで、それ以上は使い道もなく、自分ではどうすることもできないですし。それを、たまたま見つけた有紗さんが『これがいい。本当に小さな木っ端でいい』とおっしゃられてから、意識して集めるようになりました。」

― 本当に捨てられてもおかしくない“端っこ”という感じのものばかりですよね。

涼子さん「先日、私たちリビセンのメンバーもe.n.sにお邪魔しました。そのときに有紗さんに木っ端を手渡したのですが、紙袋から一つひとつ丁寧に取り出してくれたんです。その姿が忘れられない。」

華南子さん「袋を逆さにしてザーッと机に広げるんじゃなくてね。1個1個愛おしそうに取り出してくれました。あんな風に木っ端を見たことなかった。有紗さんは、私たちが見過ごしてしまうものを改めて美しいと気づかせてくれる人なんです。」

涼子さん「木っ端を集めるとなってからは、これ有紗さん好きかな、と意識して見るようになりました。こんなの絶対に人には作れない。木目の濃さ・薄さ、無作為の形の中の美しさ、そういうものに改めて気付くきっかけになりました。」

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― 今回笑達さんの似顔絵にも用いられる額縁はどのように作るのですか?

涼子さん「古材のそのまんまの形を使いたいなと思います。古材がもう既にかっこいい形をしてるから、それを活かして作りたいです。」

「それもね、涼子ちゃんが作ったんだよ」と華南子さんが指差したのは、一枚の版が入った額でした。一見ポスターにも見えるリビセンのロゴが並んだこちらは、ショップカードや名刺の印刷に使われた版だそうです。
古材で作られた額装は、なんとも優しく、そして温かな力強さがあります。

額装

決してきらびやかではありません。木は一本一本、色も形も違うし、欠けていたり、釘の跡があるものも。
でもそれこそが、真新しく画一的に整えられたものには決して出せない魅力です。どこかで長年使われた役目を終え、新たに吹き込まれた命の形でした。

2016年10月のオープンからリビセンで働き始めた涼子さん。毎日“レスキュー”に行くのが楽しいとおっしゃいます。
涼子さん「私たちは主に古民家からまだ使える古材や建具などを引取りに行くことをレスキューと呼んでいます。私たちがレスキューしなければ、捨てられて、壊されたり燃やされたりしていたはずのものなんです」
華南子さん「私たちがレスキューしてリビセンに運ぶことで、もう一度見てもらえるきっかけになる。毎回、レスキューできたものを見ては、良かったね、一緒に帰ろうって思うんです。」

― レスキューすることから始まっているんですね。

華南子さん「うちはただのかっこいいカフェと古材屋だけではないんです。力仕事もあるし泥くさい。一番大事なことはレスキューに詰まってる。本当に大切な部分はそこなんです。一般的な解体って、ユニックという解体用のクレーンでバリバリってはがして壊されちゃうの。その様子を、住んでいたご家族の方が見るのってすごく切なくて悲しい。だから、そういう悲しい思いが少しでも軽くなるように、もう一度使えるものは使いたいと思うし、人の気持ちもレスキューしたい。」

カフェと古材屋

お話を伺っている間にも、訪れたお客さまからはレスキューの相談が次々に。華南子さんや涼子さん、華南子さんのご主人でリビセン代表の東野さんは、訪れた人に、古材の使用方法を余すところなくお伝えしていました。
華南子さん「古材を見に来てくれた人が、カフェで休んでくれてもいい。実際にカフェが古材の使用例になっているから、具体的に見てもらえるの。逆に、カフェが好きで来てくれた人が、古材に興味をもってくれるきっかけになるとうれしいな」
カフェと古材置き場の間には大きな窓があり、双方の様子を見ることができます。
そして、リビセンの2階へ案内してもらうと、まるで宝の山のように、レスキューされたアイテムたちが所狭しと並んでいました。初めての景色に圧倒される私をよそに、どんどん奥へ進んで行っては何かを見つけ、「何これ可愛いー!どこのレスキュー?」「〇〇さんのところです!可愛いすぎるー!」とはしゃぐ華南子さんと涼子さん。
そのうち真剣に自分が買うものを選んでいました(笑)。スタッフであるお二人自身が一番楽しんでいる。その姿が何より素敵でした。自分たちの取り組みを本当に心から楽しみ大切にしていることが、その姿から伝わってくるのでした。

カフェと古材屋

今回リビセンは、笑達さんの似顔絵のフレーム製作と、有紗さんの木っ端のアクセサリーや、ブローチ作りのワークショップで展示を共にします。ほかにも、レスキューされた古材や古道具が店頭に並ぶ予定です。

最後に、笑達さんと有紗さんについてお聞きしました。
華南子さん「笑達さんと有紗さんは、普段私たちが見過ごしているものを、もう一度手に取り気づかせてくれる。その姿勢をいつも思い出させてくれる存在です。ほかの人にもそのきっかけを伝えているという点では、リビセンでやっていることもお二人の取り組みと似ているかもしれない。そして固定観念がないんだよね。物に対しても、人に対しても。何をしている人かとか関係なく、正面から向き合って、知ろうとしてくれます。」

笑達さん、有紗さん、そしてリビセンのみなさんが、まっすぐに届ける「きっかけ」にぜひ出会いにいらしてください。

インタビュー&文:島田絢子

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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