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インタビュー

直感で動いた心のままに
川井有紗展「芽ぶき」企画コンテンツ
2017.04.27

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「『あ、その時が来たな』って思ったの。」
自らを直感型だと語る有紗さんが、アクセサリーの次に選んだのは布と染めでした。
「私は自分のことをアクセサリー作家だとは思ってないんです。私が生きるうえで必要なことだったから、ここまで続けることができました。自分にとって本当に必要なことで、自分の心が豊かになることをやってきたから、周りの人にも受け入れてもらえたんだと思う。」
生きるうえで必要。華やかに見えるアクセサリー作りの根底には、有紗さんの切なる思いがありました。

前職で感じたという、自分の生み出すものと心の距離。やりがいもあり、評価もしてもらえる。けれど、自分の心がどこにあるのかわからなくなった。そんなときに出会った一本の枯れ枝の美しさに衝撃を受けたと言います。

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「そこにあるだけで、こんなにも美しい植物たち。自分の側に置いておきたい。そうすれば私も美しくなれるかもしれない。美しいものを作れるかもしれない」。そんな湧き出るような思いからアクセサリー作りは始まりました。まっすぐな思いから生まれる作品は、出会う人々の心にまっすぐに入り込み、惹きつけてきました。

そして今、形を変えて新たな試みが始まっています。
「その時の自分の心が豊かになることをやって、それを伝えていくことが大切だと思うの。それがいちばん自然だと思う。なんとなくだけど、染めはいつかやるだろうなって、ずっと思っていました。」

― では、もしかしたら、アクセサリーを作らなくなる日が来るかもしれませんか?

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「うん。私にとって、アクセサリーとしての形がもう必要ないと思えるときが来れば作らなくなるかもしれない。」
さらりと答える有紗さんの言葉に、思わず胸が詰まりました。今この瞬間の自分の心を信じる強さを感じたのです。

― MITTANとは2016年に埼玉のacht8さんで共同展示を行われましたね。どんな風に作品を作っていったのですか?

「私も三谷さんも、お互いに普段そんなにしゃべる方ではないと思うのだけど、素材のことなど何か共通項ができると会話が弾んで止まらなくて。こんなのもあった、あんなのもあったって次々にやりたいことが浮かんできた。すっごく楽しくて仕方なかったな。」

― 藍染の「ミント畑」はどのようにして生まれたのですか?

「MITTANの作っている洋服の中にワンピースの形はなかったんだけれど、どんなものならできそうか話していたら、羽織のようなものならできるかもということで出来上がったのが今の形。試しにすぐ側にあったなんでもない草で藍染の実験をしてみたら、意図しない美しさがどんどん生まれてくる。毎回全然違うので、すごくおもしろいんです。」
初めての試みで、何度も繰り返したという染め。それでも初めからしっくりきていたと有紗さんは言います。
「アクセサリーを始めるときもそうだったけれど、イメージができたから不安はなかった。それでも染めは初めてだから少し緊張感はあったかな。でも、とても新鮮な気持ちで取り組めています。」

― makaのゆきえさんはどんな人ですか?

「ゆきえさんは『植物の力を伝える人』。私自身、ゆきえさんがブレンドしてくれたハーブティーを毎日飲んでいます。ゆきえさんは、昔の人の知恵やハーブの効能をたくさん勉強したうえで、季節やその人の悩みに寄り添ったものを出してくれる。すごく柔軟な人で、その時々の人や場にふさわしいものを提供してくれるんです。」

― ワークショップも楽しみですね。

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「ゆきえさんと出会って、自分の生活に必要なものを自分で作れるってすごいと感じたの。今回のワークショップも、自分の心地いい香りを自分で作れる。心が安定する、お守りのようなもの。私が作るものはすごく実験的だけど、ゆきえさんの扱うハーブは勉強が不可欠なのね。その違いはあるけれど、直感的に選んだ香りのハーブが、実は体が求めていたものだったりすることもあって。それは私の作るものととても近いと思う。その感覚をみなさんと共有したいです。」

― ReBuilding Center JAPAN(以下リビセン)の華南子さんは前回の展示期間、一緒に店頭に立ってアクセサリーと似顔絵をお客さまに紹介してくれましたね。
私たちも、とても楽しかったです。

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昨年の展示風景

「最近、古いものを見直す取り組みが増えていて、世界観はそれぞれだけど、その思いはどの人も本当に素晴らしいよね。そういう人たちが大勢いるなかで、誰と一緒にやりたいかを考えると、最後はやはり『人』なんです。対等に話ができて、単純に心から素敵だなと思える人。それが、華南子ちゃんであり、東野さん(ご主人で、同じくリビセンメンバー)であり、ReBuilding Center JAPANなんです。」

― 単純に素敵だと思えるって、すごいことですよね。

「華南子ちゃんにはエネルギーがあって、女将パワーっていうのかな、誰もやっていないことを『これをやって、みんなが良くなるならやっておこう!』と、やっちゃう人なの。『やれるかどうかじゃなくて、やるの!』みたいな(笑)。それで、ほんとにやりきっちゃう。」

リビセンと有紗さんのコラボレートとして、木っ端(こっぱ)と呼ばれる廃材を使ったアクセサリーの展示とブローチ作りのワークショップも予定しています。
「この前、リビセンのみんながうちに来てくれたとき、私のための木っ端を持ってきてくれたの。木っ端にも、やっぱり人の手では作り出せない色とか形があって。見るまでは、どんなのができるのか少し不安だったけれど、実際に手に取ったら何かできそうな気がした。」
小さな子どもが宝物を見つけたときのような笑顔で、木っ端を見せてくれました。リビセンに“レスキュー”され、有紗さんの手に渡った古材。新たな命を吹き込まれ、次の時間を重ねていくのでしょう。

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季節は巡り、植物はきっと繰り返し芽ぶきます。それでも、今年の芽ぶきは一度きり。布に木っ端、そしてアクセサリーも。
有紗さんから届いた写真には、鮮やかな色をまとった布が並んでいます。むせ返るような花の香り。太陽のぬくもりを含んだ土と、雨をたっぷり吸い込んだ土。体のどこかで覚えているそんな記憶が写真越しに伝わってくるようです。季節を巡る情景が、柔らかな布に映し出されています。みなさんの手に触れるまで、あともう少し。

インタビュー&文:島田絢子

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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