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座談会・レポート

笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」レポート
2017.05.26

笑達 似顔絵展「日々をつなぐ」レポート

今年もかぐれにあったかい出会いの季節がやってきました。
5年目を迎えた笑達さんと川井有紗さんご夫婦の展示は、初めて前半と後半に分かれました。まずは笑達さんからスタート。今回は4組の作り手を交え、賑やかな日々となりました。

初めての出会い、節目での出会い、偶然の出会い。日々を生きるなかで大切につないだ縁、あるいは意図せずつながる縁が、次々に連鎖反応を起こすような毎日。今年もかぐれが皆さんの出会いの場となったことを大変うれしく思います。

入り口の正面にはReBuilding Center JAPAN(以下リビセン)の7名の似顔絵。横1列に並んだ似顔絵が風に吹かれて揺れる度に、明るい笑い声が聞こえてくるようでした。

ReBuilding Center JAPAN

インタビューにも答えていただいた華南子さんと涼子さんは店頭にも立ってくださいました。ほかの5名も、期間中に全員がかぐれを訪れ、皆さん口を揃えて「うれしい!」とおっしゃるのです。「捨てられていたかもしれない古い道具たちが表参道でいろんな人に見てもらえるなんて」と。
お客様からは「これ何?」という質問から「欠けてるのがかっこいいね」という古材の魅力の発見、「これおじいちゃんの家にあるよ!」という驚きの声までさまざまな反応がありました。見過ごされ、捨てられてしまうものも、見方を変えて命を吹き込めば世界が変わります。リビセンの取り組みを知る機会、日々の暮らしを見直す糸口、またはもっと多くの古材が待つ長野・諏訪のお店へ足を運ぶきっかけとなったなら幸いです。

リビセンの奥にはカメラを覗く黒岩正和さんの似顔絵が。
カメラの先にはラオスで黒岩さんと笑達さんが出会った人々の似顔絵が並びます。その後ろには黒岩さんがこれまで撮影した国内外の作品たちが。黒岩さんの写真と笑達さんの似顔絵が交わり、まるでたくさんの出会いの記憶が重なり合うようです。じっくりと写真を見ていくお客様は、国内外を問わずおられました。

黒岩さんがこれまで撮影した国内外の作品たち

黒岩さんの写真からは当たり前すぎて普段意識することのない「人の熱」を感じます。肌と肌が触れることで初めて、柔らかな手触りとともに気づく相手の熱と自分の熱。普段忘れてしまっている、けれど確かにそこに在る温かさを湛えています。
それは笑達さんの似顔絵からも近い印象を受けるのです。普段見過ごしてしまう、何気ない日常の中の表情。クレパスで受け止められたその人の熱は、画面から溢れんばかりに魅力を放っています。

今回は、かぐれで初めて暗闇の中での似顔絵会が開催されました。日がすっかり暮れてから、河合悠さんによって灯された蝋燭。その炎だけに照らされた表情。一対一の空間で、描き始めれば会話も止み、静かな音楽と鉛筆を紙に走らせる音だけが続くます。
今回の展示には白で統一された蝋燭が並びました。白い蝋の内側から透き通る暖色は、せわしい日々を送る心にいつの間にかじんわりと広がっているのでした。時折揺らぐ一点をただ見つめていると、周囲は暗闇に溶け込み、小さな炎とそれを包み込む蝋だけが浮かび上がってくるようです。
この火は目の前にあるのか、それとも頭の中にある幻影なのか、わからなくなりそうなくらい、自分の心のずっと奥に潜っていく時間。本来なら見ることのできない自分自身の姿を、笑達さんは捉えます。普段の似顔絵会とは異なる凛とした、それでいて優しい時間が流れていました。

  • 河合悠さんによって灯された蝋燭
  • 炎だけに照らされた表情

i a iさんによる即興制作は、明るい光が差し込む窓辺で行われました。道行く人が興味深そうに立ち止まることもしばしば。お客様と会話を交わしながら出来上がる一着の服。布から服へ、目の前で自分だけの服が生み出される過程に立ち会う機会が、人生で一体どれくらいあるでしょうか。
試着を重ね「もう少し裾が短い方がいいですね」「腰ひもは取り外しできるようにしましょうか」と提案するi a iさんは服とも対話しているようでした。人だけでもなく、服だけでもなく、人の形の上で意味を持つ服。生きる道具としての服は、作っている過程から、もうその人の人生の一部になっているのでした。

  • iaiさんによる即興制作
  • iaiさんの服

i a iさんが住む村のおじいさん、おばあさんにもこんな風にして服を作っているのだろうか。そう想像しながら、笑達さんが描いた似顔絵に目をやると、色のないはずのモノクロの画面からも光が溢れています。1日1日を生きる飾り気のない姿が太陽の光に照らされているよう。もちろん皆さんi a iさんの服を身につけているのでした。

そして恒例の似顔絵会・オーダー会は今年も大盛況。
ウェルカムボートや結婚10周年記念、子育て終了や就職記念。家族が増える度に笑達さんに会いにいらっしゃる方も。ウィンドウの作品を見て、飛び込みでオーダーされた海外からのご家族もいらっしゃいました。
今年は小さなお子様のいらっしゃるご家族や、ペットもお連れになり庭での似顔絵会となるご家族も多く、賑やかな楽しい時間が過ぎていきました。

お客様と向き合う姿勢がずっと変わらない笑達さん

一日中描き続けても、お客様と向き合う姿勢がずっと変わらない笑達さん。少し緊張しているお客様には「じっとしてなくて大丈夫ですよ」と声を掛け、いつの間にか笑いが絶えない空間に。まっすぐさも優しさも決して途切れないパワーの源は一体どこにあるのでしょうか。出来上がった似顔絵の魅力もさることながら、笑達さんの人柄に惹かれている方もたくさんいらっしゃることでしょう。さまざまなきっかけで生まれた出会いは、笑達さんによって確かな縁となりこれからの暮らしにつながっていきます。

かぐれでの展示の数日後には、益子、愛知、和歌山とイベントが続くそうです。6月にはまた東京で夫婦展が予定されています。歩みを止めることなく、自身が求める景色に向かって描き続ける笑達さん。またたくさんの出会いをつなげていくのでしょう。
来年もかぐれで新しい出会いがつながることを願っています。

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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