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座談会・レポート

川井有紗展「芽ぶき」レポート
2017.06.16

川井有紗展「芽ぶき」レポート

5年目を迎えた笑達さんと川井有紗さんご夫婦の展示は、前半の笑達さんから後半の有紗さんへバトンタッチされました。
(笑達 似顔絵展の様子はこちらから)
フレッシュハーブの爽やかな香りが広がる店内。初夏の眩しい光差し込む窓辺には有紗さんの新作、植物染めの羽織とストールが並びました。光を浴びて透き通り、風を受けてふわりとそよぐ。まるで色とりどりのたくさんの花びらが届いたようでした。

川井有紗展「芽ぶき」 展示会風景

もちろん、店内には有紗さんの代表作のアクセサリーも並びました。鉱石と石ころの光と影シリーズや縄文編みの指輪や首飾り。
どのお客様にもなぜかしっくりと合う1点があり、一瞬一瞬の美しい出合いに心満たされる日々となりました。

川井有紗展「芽ぶき」 展示会風景

今回の有紗さんの展示は3組の作り手との共演となりました。
笑達展に引き続きReBuilding center JAPAN (以後リビセン)、素敵な香りを届けてくれたmaka、そしてかぐれでも不動の人気のMITTAN

makaの樫田幸枝さんは都会の喧騒にハーブの癒しを届けてくれました。
店頭に並んだフレッシュハーブについてお尋ねすると「これはラムイヤー。羊の耳みたいにふわふわして気持ちいいでしょ。触って楽しむハーブなんです」と一つひとつ丁寧に教えてくださいました。

ワークショップも光がたっぷり差し込むなか開催されました。幸枝さんが用意してくださったアロマオイルを少しずつ自分好みの香りに配合していきます。たくさんの香りをかぐうちに区別がつかなくなったら、いったん庭へ出て外の空気を吸い、また作業に取り掛かる。そんな風にゆったりと自分のからだと心の声に耳を澄まします。
配合が決まったアロマオイルは素焼きの石に染み込ませ、有紗さん特製の花びら染めの小袋へ。首飾りにもなるようにと、有紗さんが一人ひとりに合わせて紐の長さを調節します。その姿はなぜだかシロツメクサの首飾りを編んでいるかのようにも見えました。

「自分の心が落ち着くものが一つ側にあるだけで、日々の暮らしが全然違うはず」と有紗さんは話します。
淹れたてのハーブティーを口に運びながら、誰もが自然と笑顔になる優しい時間が流れました。初めてシロツメクサの首飾りをつけた小さな女の子のように、皆さん素敵な笑顔で自分だけの香りと共にお帰りになりました。

  • maka ハーブのワークショップ
  • maka ハーブのワークショップ

リビセンは前半に引き続き、華南子さんと涼子さんがそれぞれ店頭に立ち、リビセンのアイテムだけでなく有紗さんの作品もお客様に紹介してくださいました。
ブローチ作りのワークショップには、涼子さんが集めた木っ端が古いケーキ型に入れられ並びました。そこから皆さん思い思いに好きな形を選んで組み合わせます。木っ端も一つとして同じものはありません。木目の違いだけでも、シャープだったり、不思議な曲線を描いていたり。それらを組み合わせることで思いがけないリズムが生まれ、色が響き合います。

大人になってから木に触れる機会なんてめったにないですよね。
皆さん日常を忘れ、目の前の木っ端の手触りを楽しまれました。できあがったブローチは不思議と作った人のキャラクターが表れていて、ケーキ型の中にあったものとは全く別のものに生まれ変わっていました。

  • リビセン 木っ端 ワークショップ
  • リビセン 木っ端 ワークショップ

そしてMITTANとの共作の羽織。MITTANのデザイナー・三谷武さんと有紗さんが話し合い、生まれた形です。MITTANの服は独特な空気感を持ちながら、普遍的な美しさも備えています。そこに有紗さんが色を重ねることで、一つとして同じものがない特別な一着ができました。
まるで雪解けあとの野原のように小花が可憐に咲く羽織。花吹雪を閉じ込めたような羽織。生命力あふれる植物が太陽に伸びる姿をそっくりそのまま写し取ったような羽織。有紗さんが「いつかやるだろうと思っていた」という染めからは、意図しない色や動きが捉えられ、いっそう植物の力を感じるのでした。

私も羽織に袖を通してみました。鏡を見るとその可愛さに思わず口元が緩んでしまいます。そして『わたしのワンピース』という絵本を思い出しました。真っ白な布をうさぎがワンピースに仕立てると、花畑では花模様に、雨が降れば水玉模様に変わります。草の実模様になれば小鳥が飛んできてついばみ、今度は小鳥模様になって一緒に空を飛ぶ。そんな夢のようなワンピースに有紗さんの染めは限りなく近いのではないでしょうか。有紗さんの手で心のおもむくままに生み出される作品は、大胆ながらも優しく、夢にあふれているのでした。

植物染めのシルクの大判ストール

植物染めのシルクの大判ストールは壁にも広げて展示されました。ある時はまだら模様の薄オレンジ色のストール。太陽の光をたっぷり浴びた花びらがつむじ風と踊っているかのよう。ある時はくすんだ緑色を含んだ水色のストール。川辺の水草のよう、雨が降り注ぐ海のよう、風が吹き抜ける草原のよう。見る人によって、きっと違って見えたことでしょう。有紗さんの作品に触れる度に、感じ方に正解はないのだと教えられます。私たちがからだのどこかで覚えている季節を巡る情景が、柔らかな布に映し出されているのでした。それらは普段見過ごしてしまっている、すぐそこにある自然の美しさに気づかせてくれるものでもありました。

年を追うごとに表現の幅を広げる有紗さん。私たちと自然の美しさをつなげてくれる作品をかぐれでご紹介できる喜びをかみしめる展示期間となりました。来年はどんな景色を一緒に見られるでしょうか。

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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