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座談会・レポート

omotoの日々と。 8月 岩手・浄法寺にて
2017.11.27

omotoの日々と。 8月 岩手・浄法寺にて

みなさん「漆掻き」という言葉をご存知でしょうか。
漆の樹皮に傷を付け、そこから滲み出る生漆(きうるし)を採取すること、またはその職人を指します。岩手県二戸市浄法寺は古くから漆の産業が盛んで、漆自給率3%という日本漆のうちの約70%を占めています。
omotoのお二人はいわき・東京に続く拠点として浄法寺でも製作を始められました。
日本にあと一人しかいないという漆掻きの道具を作る職人。康人さんにその後継者になってほしいという日本うるし掻き技術保存会からの依頼があり、漆掻きの季節である6月から10月を中心に浄法寺に滞在し、仕事を請け負われています。

浄法寺のomotoの家に着いてまずびっくりしたのは、そこが間違いなく“omoto邸”だったことです。
康人さん・智子さんも(1週間前後の滞在期間はあるとは言え)まだ数える程度しか来ていないというお家が、いわきのomoto邸と同じ空気をまとっていたのです。台所の調理道具が並んだ姿や、古い時計がカチカチと時を刻む音、温かいお茶入りのポットが置かれた低いテーブル、まだ完成していないというお手製の鍛冶場も。

  • omoto邸
  • omoto邸

すべての場所ですべての道具が息づいていて、以前康人さんが「どこにでも神は宿っている。それを意識して生活するか、しないかの違いなんだ」とおっしゃっていたことを思い出しました。
omotoのお二人は、日々当たり前のこととしてそれを意識しているからこそ、どこへ行っても変わらない暮らしができるのだと感じました。

「なんで浄法寺に拠点を作ったかっていうと、漆掻きと僕のお互いのため。当たり前だけど、漆掻きは道具の使い方とか癖も一人ひとり違う。その場で向き合って直に微調整して「どう?」って話ができるほうが効率もいいし、僕の技術にもなる。でもそのためだけに浄法寺にいるのは空いた時間がもったいないし、omotoの仕事も並行してできるようにしたんだ。」と康人さん。家の近くにある漆畑を案内してくれました。

漆の木

これはクルミ、あれは漆、と指し示してくれますが、私にはまったく区別がつきません。
「漆の木とクルミの木は、地元の人でも見分けるのが難しいくらいそっくりなんだよ。よーく見るとわかるようになるんだけどね。この時期に見分けるには実を見つければいい。」

漆の実

「漆の実はロウに包まれていて、自然に土に落ちただけじゃ芽が出ない。鳥が実を食べて、からだのなかでロウが溶けて、それがフンと一緒に土に落ちてやっと芽が出る状態になるんだ。不思議だよね。」

初めて目にした漆畑は人気のない整然とした空間で木漏れ日が揺れていました。何十本もの木々が地面から水を汲み上げ、その中に静かに生漆を蓄えている音が聞こえてきそうな美しい光景でした。

今回はomoto邸からすぐの漆工房・滴生舎で、柿渋染めワークショップが行われました。

その準備の前に、まずは康人さんと智子さんと一緒に腹ごしらえ。
智子さんが朝にぎってくれたおむすびをいただきました。まんまるつやつやのおむすび。
3月にいただいたおいなりさんと同じく、1個がしっかりとした大きさ。きれいな形に整えられた、でも決してかたすぎないそれを口に頬張ると、一粒一粒の食感がびっくりするほど感じられ、お米本来の甘みが広がります。今まで食べたおむすびの中で断トツのおいしさ。これは元気が出ます。やはり気付くとペロリと2個を食べてしまっていました。

  • おむすび
  • おむすび

次々に参加者の皆さんが集まり、終始にぎやかな雰囲気で時間は進みます。
天気にも恵まれ、抜けるような青い空は気持ちが良く、まさにワークショップ日和。薄茶色に染まったたくさんのや布が風に吹かれる姿と、青々とした芝生のコントラスト。美しい景色のなか、参加者のみなさんも明るい笑顔が絶えませんでした。

ワークショップ日和

染めたものが乾くまでの間、滴生舎の小田島さんに漆の案内をしていただきました。
「漆掻きの職人さんが、特別な道具を使って少しずつ傷付け、滲み出る生漆を一滴一滴集めます。傷付け方で出方が変わるので慎重に。

小田島さん

「殺し掻き」といって最終的にはその年中に木を切り倒してしまいます。その代わりに、もちろん植樹もします。1本の木が生漆を集められるように育つまで15年かかるんです。それでも1本の木からとれる生漆の量は牛乳ビン1本程度。私たちは自然の恵みをいただきながら、伝統文化を受け継いでいます。」

時間を超えて受け継がれていく自然との共存の形。それを守っていく道具に、いま康人さんが携わっているのです。

具だくさんのお味噌汁、納豆、天然鮭を七輪で焼いたほぐし身、ほうれん草の麺の豆乳ラーメン、かぼちゃのリゾットなどなど。omoto邸を訪れたことのある人なら、誰もが智子さんのごはんのおいしさをご存知のはず。丁寧に刻まれた野菜、しっかりと火の入れられた食べ物はびっくりするくらいおいしくて、すっとからだに入っていきます。
マクロビオティックの考えを基にしながら、おいしいものをおいしくいただくために独学でも勉強されているという智子さんに、康人さんとの食事について伺いました。

  • 具だくさんのお味噌汁、納豆、天然鮭
  • 具だくさんのお味噌汁、納豆、天然鮭

「最初の頃は康人くんによくダメ出しされてた(笑)。マクロビも勉強したけど、いまはそれだけじゃなくて、いろんな本を読んだり実際に習いに行ったり。からだに必要なものをおいしくいただくにはどうすればいいかなって考えてる」 「私たちがやっていることはよくストイックだと言われる。でも自然なことをやっているだけなんだよね。明日のために必要なものをいただき、不必要なものは摂らない。お肉も食べたっていいし、康人くんが時々狩りもするからまったく食べないわけではないんだけど。明日の仕事をこなすからだのことを考えたら、食べなくてもいいかなという選択が多いだけ。」

康人さんと智子さんの食べる量にもびっくりします。お二人とも決して大柄ではないのに、しっかりと食べます。特にご飯。お茶碗にたっぷりとよそわれた白米をあっという間に食べてしまいます。その分、使っているんだなあと、食卓を一緒に囲んで、近くでお仕事を拝見して初めて実感したのでした。

今年の展示も最終日に座談会が行われます。今年のテーマは「つくること たべること」
つくるために、たべるもの。omotoの製作を支える食べものについてのお話を、毎年恒例、福島の地酒とともに伺います。どうぞお楽しみに。

島田 絢子(表参道店スタッフ)

島田 絢子(表参道店スタッフ)

愛媛県出身。大学では芸術学を専攻。
2015年よりかぐれ勤務。かぐれに出会い、手仕事と言葉を通じて日本の美しさを感じる毎日です。


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