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インタビュー

「共に」スペシャルインタビュー(後編)
2013.07.22


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前編を読む
目的は同じ

――まず、今回の展示会の特長として、写真と盆栽を一堂に展示しているのですが、その理由は?

「『塩津丈洋植物研究所』が何を研究しているかと言うと、植物と人が仲良く暮らしていく関係の作り方で、その現在までの研究結果として今回写真と盆栽を展示します。
植生豊かな日本の野山の姿がとても好きで、前々から山を歩いては自分の好きな景色を撮りためているんだけど、瞬間瞬間で移り変わるその一瞬をおさえたいという気持ちの先に、このきれいな景色を共有したいっていう思いがあるんだ。だから自分にとっては、写真も盆栽も同じ感覚で、美しい植物の世界を知ってほしい、というのが共通の目的です」

まるで野のように

まるで野のように

――写真を撮るとき、誰かに見せたいって思っているんですね。では、植物を器に設えるときの感覚は?

「山には樹木があって苔が自生していて岩があって……、わたしの盆栽では、自然のあるがままの姿を限られた器の中に設えようとしています。でもそれは自然の姿をただそのまま写すんじゃなくて、噛み砕いて、そこから感じとる本質的なことを表してる。風景を見たとき、その人の生き方や経験で、いろんなものを感じるよね、それぞれ違う、生まれ故郷の景色だったり。 わたしは、盆栽を見る人に、生きている自然そのままを感じてもらえるようにしたい。
究極的には、『まるで野のように』という在り方が理想で、それは人間の作為の入らない姿。無心で植物の心に耳を傾けて、植物がここに入れてって言ってくるのを聞き取って、無理なくそこに設えるんだ。
今も、いつも一緒に暮らしている植物たちに、朝起きて、今日も元気だねって話して、今回の個展には誰が行こうかって聞いている」

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――展示作品を通して伝えたいことを聞かせてください。

「『生きている』ということの素晴らしさ。生命の美しさ。生きていて、命があって、植物はただそれだけで美しいってこと。
植物ってすごいんだ。葉・花・根・幹、と魅力的な造形美を備えている上に、ごくごく自然に、花が咲き、種が落ちて、芽が吹き、成長する……、そしてそれを繰り返している。光合成をしていつも酸素を作り出してくれたり、夏の強い日射しを木々が守ってくれたり、山から湧き流れ出る水も、土を支える木々があってこそ。さらには季節と共に姿を変えて、春の芽吹き、夏の新緑、秋の紅葉、冬の落葉……。植物を通して四季の移ろいを感じられるしね。植物と共存することは、特別なことではなくて自然なことなんだ。人間はいつも植物を必要として、ずっと共に生きてきたし、これからもそうなんだよね。

でも今はそれがちょっと違ってしまっているから、展示を見てくれた人が植物のことをより好きになって、自然に興味を持ってもらえるきっかけになってくれたら良いと思っている。それで自然の大切さ、命の美しさを感じてもらえたらうれしいです」

きっかけづくり
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寄り添うこと

――最後に。東京でも、人と植物は良い関係を築ける?

「確かに東京の都市部は植物にとっては生きにくい場所なんだけど、植物と一緒に生きていくことはできます!
東京の住宅事情では庭を持つことも難しくて、ほとんどの人がベランダで植物を育てるしかないんだけど、植物に身近に触れる環境が少ないからこそ、植物が必要だと思うし、ここで盆栽を通して植物の魅力を伝えていきたいと思ってるんだ。

元々は自然環境にいた植物たちでも、自分たちの住環境に合わせて取り入れて、愛情を持って接すれば、長く寄り添いながら暮らしていくことができる。そうして、いつも側で実際に植物に触れていると、自然に深い愛着がうまれ、広い興味も湧いてくるよね。本を読んだり、話を聞いて知識を得ることも大事だけど、『直に感じる』ということが、人の気持ちを動かすと思うんだよね。
そのずっと先には、平和があると思っています」

matome

展示会情報
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関連イベント
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2013年7月27日(土)・30日(火)
かぐれ表参道
お好きな写真をもとに、器に植物を生け込みます。

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2013年7月26日(金)
かぐれ表参道
二人の描く理想の森の姿、自然と人の関係とは……。


塩津

【プロフィール】
塩津 丈洋(植物研究家)
緑豊かな和歌山県に生まれ、農業を営む祖父のそばで幼い頃から植物が身近な環境で育つ。盆栽職人の下で修業後、2010年、植物の治療・保全を主とした塩津丈洋植物研究所を設立。自然破壊・環境問題が深刻化している現在に、改めて植物の存在価値を見つめ直すための活動を行っている。ベランダの小さな花から庭の大きな樹木まで、植物の検診に駆け回る毎日を送る。
・塩津丈洋植物研究所 代表
・IID世田谷ものづくり学校内「自由大学」教授
・名古屋芸術大学OHOC講師

塩津丈洋植物研究所
http://syokubutsukenkyujo.com/

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/塩津

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