オリジナルコスメ

vol.6 立川奈緒子(オーガニック美容研究家・セラピスト)

セラピストとして資本作りのために始めた食へのこだわりは、次の仕事の現場でさらに深まります。
「食べものを変えるとなった時に、やはり季節のものが食べたいと思ったのですが、スーパーに行っても、旬の野菜が分からなかったんです。それに、有機野菜と普通の野菜と、何がどう違うのか、通り一遍の答えしか説明できないのでは説得力がないなと思って。それで、そういったことをきちんと知るために、家庭菜園の編集部に入りました。そこで、植物が種から生まれ、芽を出し、剪定され、花が咲き、収穫されて、また種になり……という一連を見て、なんて素晴らしいエネルギーの循環なんだろうと思ったんです。自分が野菜の一生の“ここ”を頂いているんだということを初めて知り、植物に対して今まで以上に感謝の気持ちが生まれました。

ハウス栽培でピーマンを作っているある農家で、そこはなるべく農薬を使わないように作っているのですが、それでも12〜13回は撒くんですって。通常の場合、中には50回撒く農家もいるそうなんです。それを聞いた時は本当に驚いて……。あとは、人工的に野菜の花に受粉をさせるために、ミツバチに抗生物質を打って、無理矢理受粉させるところもあるんです。そうしたミツバチは、女王蜂の世代交代がされることなく、一世代で絶えてしまうことも。こうやって人の勝手でものを作ろうとすると、自然界に無理が生じて、色々なところに迷惑をかけてしまうんだなって……。そういうことは、都会に住んでいるととても感じにくいから、少しでも多くの人に伝えられたらと思っています」

ワークショップルーム
植物から作られている化粧品を使うことは、そのエネルギーをもらうこと
ハチミツを使って手作りしたリップグロス

食べものだけでなく、植物の力を生かした手作りコスメのワークショップや、オーガニックコスメの講座も精力的に行っている立川さん。ご自身も肌トラブルに悩んだ時期があったそうです。
「アトピーやアレルギー性の皮膚炎があって、疲れると赤くなったり斑点ができたり、かゆみが起きたりしました。特にファッション誌の編集部にいた時は、自分がやりたいことと違うというストレスからメンタル的に弱っていて、免疫力が落ちてとても悪化してしまいました。化粧品が何も使えなくなって、百貨店の化粧品コーナーを回ったり、インターネットのクチコミを見たり、試しては合わないということを繰り返しました。そこで初めて成分表をきちんと見た時に、植物の名前と、よく分からない化学名と、両方混ざっているな、と気が付いて。それから色々調べたら、アレルギーや発ガン性の疑いがある成分など、怖い話が出るわ出るわで(笑)。私は何でこれを知らずに、化粧品にすごいお金をかけていたんだろうと思って、こういうことを誰かがきちんと伝えないといけないと思いました。それで、オーガニックコスメを専門に紹介する雑誌の編集部にボランティアで入ったんです。そこで、植物だけで作っているメーカーさんと、そういったことを考えずに作っているメーカーさん、両方の話を聞きました。すると、その両者は立ち位置が全く違うんですよ。植物だけにこだわって作っているメーカーさんは、消費者のことや、肌の健康ということをしっかり考えて作っているところが多いのですが、もう一方は、売上や、広告費をどうやって捻出するかなど、そういったことをメインに考えていて、そこに大きな隔たりを感じました。

植物から作られている化粧品を使うことは、そのエネルギーをダイレクトにもらうことだと私は考えています。食べものと同じく、植物の命を頂いていることに感謝してつけるというのが大事なんじゃないかと思うんです」 取材を通して、様々な現場を見てこられた立川さん。実体験から紡がれる言葉には、他にはない説得力があります。

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