するどいのに、やさしさがある。
そしてなにより歩きやすい。
増満兼太郎さんの美意識と好奇心は、暮らしを大切にする気持ちとつながっている。
だからサンダルもベルトもかっこよくて働きもの。
さらさらと手描きするように Houseのマスミツケンタロウ個展にむけて
ナマの増満さんに会う前に、Houseと描かれたロゴにひかれた。サンダルの形もさることながら、金属のアクセサリーたちもその手描き文字のまま。いつかこの人と知り合うのかな、と漠然と予感していたが、わたしはそのころ積極的には新たに人に会うのがおっくうだった。だから去年の夏、えみおわすと一緒に増満さんが展示をされて、無理なく出会えたのは、幸運だった。
藍染めをした帰り道、土砂降りにやられながら、神楽坂の店にいった。藍草に染まった指先と同じ色のサンダルが、女にしては大きめの自分の足にぴったりで、ほかの生成や渋木も美しかったが、迷うことなく久しぶりの買い物をした。
履きやすくて、ていねいに歩けるような感じがする。がさつにしか歩けないわたしも、少しは増満さんの字のようにさらさらと歩をすすめられるかも。藍色のサンダルを履きながら夏と秋が過ぎた。 ある冬の日、若い知人としゃべっていたら、彼は増満さんの大学時代の後輩で、増満さんが建築科の卒業制作ですでに靴をつくったときいて、「へえ!」と、あのHouseの文字が目に浮かんだ。 Houseという屋号は、増満さんが描こうとしてきた何かをあらわしているんだろうか。そんなふうに興味をつのらせていたらご本人がかぐれにたまたまやってきた。2度目のナマのマスミツケンタロウ。
まさかこんなに早く、2度目のときからほぼ半年後に個展をやらせていただけるとは思っていなかった。 ある人の展示を企画させてもらうというのは、その人と知り合うことでもある。手描きの文字を眺め、サンダルを履いたり、裾止めベルトをして自転車に乗って、増満さんと何度か会って、竹カゴをつくったり、焚火をしたり、ちょっと真面目に話したりして、案内状ができ、Houseに近づいていった。たぶん増満さんも、かぐれのスタッフやわたしや、お店に来てくれる人たちに近づいているのだろう。
サンダルを中心に、それも草木染めのうつろう色をそろえた展示をしてくれる。ベルトと床革のバッグと金属のアクセサリーも少し。丸の内のお店には鳥のモビールが来るらしい。
どんな風景がひろがるのか、Houseのドアをあけるのが待ち遠しい。
手描きの線とうつろう色、 鳥のさえずり、雨あがりのサンダルトリップ。
ぜひお越しください。
石田紀佳(展覧会キュレーター)