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有るがまま


有るがまま

Photo by Waki Hamatsu(http://wakihamatsu.com/

有るがまま

川井有紗「有るがままのアクセサリー展」企画コンテンツ 》
インタビュー&文:渡辺敦子
本文写真:笑達

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散歩中に見つけた木の実や、手近にある花びら、海岸で拾ってきた貝殻……。本人曰く「拾い物」でアクセサリーをつくる有紗さん。
“造形をする”という意識があまり感じられないのが、アクサセリー作家としては変わっているところ。自分で形を作るのではなくて、自然の造形が先にあって、それをそのまま人が使えるようにする、というのが有紗さんのアクセサリー作家としての在り方です。

「だって、そこにはもう完璧な美しさがあるから、そのままでいいし、その感動を伝えたい。それが人に使ってもらえると、私もなにか社会に貢献できている気がする」とちょっと照れ臭そうに話す有紗さん。
自然物の美しさを、現代の人の暮らしに合うように、自然の側に立って翻訳しているような、彼女の仕事にはそんな印象を受けます。
「私は自然の美しさを見つけるだけで、あとは人との関わりで作品が生まれているんです」という彼女。実はまだアクセサリーを作り始めて3年という彼女に、制作ヘの思いを聞いてみました。

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大学卒業後は、似顔絵作家でした。
周りにいる楽しい人達に引っ張られ、流れに流されて出版社に勤めて、似顔絵作家として活動を始めました。
依頼を受けては制作をする日々で、注文も多く、毎日深夜までの作業が続きます。楽しかったし、クライアントに喜んでもらえてそれなりの満足もあったけれど、何か違うと思っていました。自分でない、他の人の仕事のよう、と感じていたそう。そう思う要因のひとつは、今の旦那様の達也さん(現在は独立し「&NIGAOE」 の似顔絵作家“笑達”として活躍)が、それはそれは天職のように似顔絵を描いていたから。それを隣で見ていた有紗さんは、相次ぐ注文に仕事をこなしながらも、疑問を持ち続けては自己嫌悪になる日々で、26歳になった2009年の秋、それらの仕事から離れようと決心しました。
「たっちゃん(達也さん)とふたりで立ち上げた部署だったから、辞める時は喪失感と劣等感も大きかった。でもたっちゃんは好きなことをやったらいい、って言ってくれた」
その時に、具体的に今の仕事を始めることは考えていなかったそう。でも、会社を辞めて半年後には、初めての個展をひらきます。

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「衝撃の出会いがあったんです! 仕事をやめて、急にぽっかりと時間ができて、その日は近所を何も考えずに歩いていたんです。そしたら、急に、目の前に落ちていた枯れ枝に、ふと目が止まったんです。なんて美しいんだろう!って。もう驚きでした。そこからです」
自分にしかできないことをやりたいと思って会社を辞め、ありのままの自分でいるにはどうしたらいいのかと悩んでいた。その時、道端にあった一本の枯れ枝は、ただあるがままにそこにいて、それが完璧に美しかったという。
「そのままでいいって、思えたんです。自然も、人も」

その美しさに触れていたら、その尊さを表すことに夢中になった。
毎日、素材に向き合い、手を動かす。そして出来上がった作品を、人に見てもらいと思って、ギャラリーの扉を叩いたのが会社を辞めて半年の時だった。そこは京都の恵文社一乗寺店。
2010年2月に初めての個展をひらくことができ、それからは作ったアクセサリーがいつの間にか人づてに広がっていった。以来、定期的に展示会を開き、作品を発表している。「人に恵まれているんです。知り合った人たちが、どんどんつなげていってくれて、引き上げてくれて、ここまできました」

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2012年5月、自宅兼アトリエの建物に、ギャラリーをオープン。
普段は週末にお店として開き、時々オーダーメイドの打ち合わせをしたり、音楽をやっている友達がコンサートをしたり、と多様に用いられる。
「関係があって、うまれるのがいいと思っています。私の場合は常に相手がいたり、素材があったりして、そこから作品ができていくんです。そういう風にしかつくることができません」

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自然からインスピレーションを得て、デザインする作家は多かれど、自然物をそのまま閉じ込めよう、という人は珍しいかと。
「拾ってくる花や貝は、ほんとうに素晴らしいんです。何が素晴らしいかというとただただそこに、生きているということ。その土地、気候、空気の中で、そこにしかない命を育んできた、そんな美しさにかなうものは自分にはつくれません。だからその美しさを伝えたい、自分の感じる感動を人にも感じてほしいと思います」
いつも自然界にある美しいいのち、その尊さに心を動かされている。それは、有紗さん自身が、自然物のように、無欲であるがままの姿でありたいと願っているから。

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「自分が素直に、かっこいいって思うものを見つけているから、それをどう人が使えるようにするか、考えるだけなんです」感覚的に拾集したものに有紗さんの手が加わって、人のためのものになる。自然物と、人との仲介をしているよう。
「そのままでいいって、思えたら幸せなんです。そのままで美しい自然物に触れて、わたしも美しい人になりたいって思っているんです。そうしたらもっと美しいものを作れるようになれるんじゃないかって……」

衝撃の出会いに導かれ、アクセサリー作家として活動する有紗さん。その独特で魅力的な作品たちに会いにきてください。

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profile

1982年生まれ。広島県出身。
2009年、独学で植物を使ったアクセサリーを作り始め、半年後の2010年に初めての個展を開催する。
そののち、植物に限らず、海や山で出会う植物、漂流物、貝殻、鉱物など、自然素材を中心に作品の幅を広げながら、個展、グループ展などを中心に作品を発表。
2012年、京都にてアトリエ兼ショップの e.n.s (エンス)をオープン。
自分の心に正直に、有るがままの自然物に向き合い、制作に励む日々。

http://kawai-arisa.jp/

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植物を身に纏う
2013年05月07日 お知らせ, 作家, 読みもの
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